乗り込むと慌ててマスクを着ける小太りの運ちゃん。
車は殺風景な空港周辺を抜け、オレンジライトがまぶしい雨の高速道路へ。

響くiPhoneの着信音。
俺はマナーモードにしてたはずだから、運ちゃんのだ。

え、出るんかい!
雨、高速、電話に出る運ちゃん。

高速を降りる。
なんとなく東京とは違う匂い、見慣れない街並み。

なんか遠回りしてんじゃないかという偏見。
Googleマップで確かめるが、ちゃんと最短経路を行っていた。
疑ってごめん。

窓から入り込む雨。
それでも窓は閉めない。今は2021年春だから。

雨の冷たさに反して、風は生温い。

旅、を思い出した15分間の話。

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最近見た映画「ちいさな独裁者」

封切りのときに武蔵野館にアプリで知り合った映画好きの女の子と観に行った映画。
初めて会った子となんちゅー映画観に行ってんすか。
(その子とは3回武蔵野館で映画を観て3回食事を奢った挙げ句、本命が出来たと連絡が取れなくなった)

『ちいさな独裁者』は邦題で、原題は“Hauptmann”(ドイツ語で大尉の意味)。
ガッカリ邦題が多い中、この邦題には納得。

脱走兵がたまたま見つけた大尉の軍服を着て、身分を偽って横暴を繰り返していく話。
だけそれは結局、「ちいさな」でしかない。あんだけ横暴しといて、お前最後それかよ!というオチを観たあとに、「独裁者」という恐怖感を煽るワードに「ちいさな」をつけるワードセンスが腑に落ちます。(この人身長もちっさいんだけど)

戦争映画を観るときは、残酷な戦争という「ダークサイド」の中にある「ライトサイド」を感じるのが楽しみのひとつ。
ナチスドイツだって、僕らよりたった2世代・3世代前の話。人間そんなに変わらない。子供をぶった切りまくったアナキン・スカイウォーカーだって、ダース・ベイダーだって、結局ライトサイドな心がある。映画の中で戦争に参加している殆どの登場人物は、そんなライトサイドの心を持っている。

主人公ヘロルトも、参謀になるフライタークも、ライトサイドの心を持った一介の市民。それが、戦争という狂った状況の中で、スイッチをパチっと切り替えたようにダークサイドに変わる瞬間を読み取るのが、この映画の一番の面白さかもしれない。でも結局スイッチが切り替わっただけで、「ちいさな独裁者」でしかないんです。

エンディングもとても良くて、120分映画を観せておいて一番伝えたいことはそこに詰まってるんじゃなかなという感じ(もちろん内容見た上で理解できることなんだけど)。ナチスが題材の映画を観ると、こんなにむごい事をして、と必ず思うが、それもすべて今のドイツ、今の世界と地続きなんだ。そんなエンディング。

あと個人的に、どんな映画でも「ハイル・ヒトラー」を面倒くさそうに適当に言うオッサン軍人が好き。ビシッとキメて言うやつにロクなやつはいないよ。

Filmarks https://filmarks.com/movies/81436

主人公のモデルとなったヴィリー・ヘロルト 

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最近見た映画「佐々木、イン、マイマイン」

佐々木、イン、マイマイン。

柄にもなくパルコに買い物に行こうと坂を登る道すがら、シネクイントの前で目に飛び込んできたこのポスター。
え、どれが佐々木なの?このイケメン?モジャモジャ?

思わず足を止めて、タイトルを検索。
スマホに流れる予告編を観ながら立ちすくし、すぐに上映時間を調べた。

青臭くて突き抜ける疾走感。
自分の過ごした青春や、こう過ごしたかったという幻想の中の青春が入り乱れて、グリグリと心を持っていかれる。

そして大人になってからの淀み、停滞感。
何が正しく、何が間違っているのか。

突き進む事も彷徨う事も、
何かをする事もしない事も、
何も間違いじゃないんだ、と少し救われた気がした。

スクリーンの中に引き込んでくれた役者さん達が凄かったし、静かにグッと心を掴む音楽も、儚い青春時代と淀んだ今を映し出す映像も、脳裏に焼き付いてしばらく離れない感覚。

色んな人に予告編のURLを送りつけることにします。
あー、もう一回観に行こう。
佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!

佐々木、イン、マイマイン
https://sasaki-in-my-mind.com/

上映館(近くはシネクイント、武蔵野館など)
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=TSt31hSv

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安孫子さんと明珍さんとヤギの肛門

元GOING STEADY/銀杏BOYZのベーシスト「アビちゃん」こと安孫子真哉さんと、同じく元銀杏BOYZのギタリスト「チン君」こと中村明珍さんのオンライントーク配信が行われた。
男として大事な事の多くはゴイステ銀杏から学んだと言っても過言ではない世代(いや、過言かも)なので、この2人の名前の並びを見て興味が湧かないわけがないし、2013年に同時に銀杏BOYZを離脱して以降、断片的な情報しかなかった2人を繋げるものは何なのか、とても気になったので迷わずに配信チケットを購入。

2人の脱退後の経緯は名前で検索すると様々な記事でも紹介されているので詳しくはそちらを見てもらうこととして、簡単に言うとチン君は山口県の島で僧侶!になり農業を営み、アビちゃんはサラリーマンをしながらレーベルを立ち上げ、それから後を追うように農業の道に進んだとのこと。

銀杏離脱後にどう巡って農業まで行き着いたのか、就農するときの苦労や農業界での課題などを、言葉を一つ一つ選びながら丁寧に語る安孫子さんがとても印象的だった。
(聴いて損は無いと思うので、録画もぜひ→https://www.mishimasha-books.shop/items/60016d6272eb465c55b55f4a

バンドの破天荒な印象が強すぎるし、青春時代においては神格化されていたバンドの人達なので、「ミネタ」「村井」「アビちゃん」「チン君」と、ある意味スターとしてこう呼んでいたけど、今日話していた2人は1人の人間としての「安孫子さん」と「明珍さん」で、なんだか近くの存在になった気がして、嬉しくもあり、ああ時代の流れって巡り巡ってこうやって帰結していくんだな、と不思議な感覚になった。(それがまた好きなミシマ社の企画で、というのも不思議な縁です)

バンドも農業も、それから他の職業にもすべてに言えることは、絶対的に「大変」だということ。その大変が楽しめるものなのか、乗り越えられるものなのか。
安孫子さんはキツイ収穫の時期をバンドのツアーに例え、その先にあるもののために駆け抜けられると言っていた。
大変なものから逃げていないか。自分は逃げた結果、その先にあるはずだったものを見れていないのではないか。そう気付かされ、その衝動を書き留めねばと、ブログを書いています。

BOYS&GIRLS、さくらの唄、童貞ソー・ヤングを聴いて過ごした青春から約20年。
40歳を超えたオジサンの「アビちゃん」から、30歳を超えてオジサンになりかけの自分が、農業の話しを聴いて刺激を受けるなんて。
ここからまた10年、20年。こんなヘンテコな事がまた起こるような、曲がりくねった道を歩んでいきたい。

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定食屋事件簿『ナチュラルに』

週に一度は行く、お爺ちゃんが切り盛りする定食屋B。
特別なメニューは無いが、魚の定食が何種類かあるのが良い。

たまに天然ボケを発揮する店主のお爺ちゃん。
客もまたお爺ちゃんが多く、店主のお爺ちゃん×客のお爺ちゃんの組合わせになった際、要はボケ×ボケという構図になるため、事件が起こりやすい。

先日、食事を追えた客のお爺ちゃんが、お盆をカウンターに上げ、ごちそうさま、と言い残し、店主のお爺ちゃんも「いつもありがとうございます」と返し、客のお爺ちゃんはゆっくりと退店。
(ちなみにこの店主のお爺ちゃんは、初めてきた客にも「いつも」ありがとうございます、と言う。)

実にゆっくり時が流れる昼下がり。いつもの光景のように思われたが。

別の客「あれ、今の人お代払いました?」
店主のお爺ちゃん「・・・・・・あれ?もらってなかったか。はっはっはっ」

・・・

客のお爺ちゃんのゆっくりした動作から、食い逃げする気は毛頭無いだろう(毛髪も無かった)。

思わず、「ナチュラルに食い逃げ〜」とPerfumeの声が頭の中で再生された、平和な午後1時の事件簿でした。

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