2024 11/7 00:01
25℃の水風呂
人生何があっても、この瞬間だけは何もかも忘れて心が満たされる。というくらい昼間の銭湯が好きだ。
できれば、しっかりと太陽の光が入る銭湯が良い。天窓だとパーフェクトである。
差し込む太陽に照らされるお湯、まばらな客、カコンと響く洗面器の音。これが幸せの3条件。
都内での仕事の帰り、茹だる暑さに悶え、水を浴びなくては生きて帰れないと思い近隣の銭湯を探したところ、徒歩15分のところに、水風呂付きの銭湯があった。
15分歩くのであれば、まっすぐ駅に行き帰路につく方が効率的かつ余計な汗をかかずに帰れるが、一旦銭湯に行くと決めた心は揺らがない。
着く頃にはシャツもパンツもぐっしょり。汗をかくことを想定して替えのTシャツは持っていたが、パンツまでは持ち歩いていなかった。番台でパンツはありますか、と訪ねたところ、なんかすごい奥の方から埃のかぶったトランクスのパッケージを引っ張り出してくれたが、数百円を惜しんで新しいパンツは諦めた。
見えるもの、聞こえる音のすべてがパーフェクトな銭湯だった。
水風呂の水温は25℃。おそらくサウナーと呼ばれる人たちからは、ぬるいと一喝されそうな水温であるが、サウナには入らず、お湯と水風呂を交互に入る自分にとっては、ちょうどいい温度設定だ。
25℃の水風呂に浸かって目を閉じていると、子供の頃に家の浴槽に水を張って浸かっていた感覚を思い出した。
あのときの水の温度と同じだ。
冷たさとぬるさのちょうど心地の良いところ。
夏休み、川崎のアパートの風呂場、セミの声、薄暗くも塀の隙間からこぼれて入ってくる太陽の光、ウルトラマンの腕がクルクル回って泳ぐおもちゃ、あがったのあとのチューペット。
何の変哲もない夏休みの一日だけど、25℃の水風呂のおかげで鮮明に記憶が蘇った。
帰りにコンビニでチューペットを探したけど無かったので、クーリッシュをチューペットがわりにしてチューチューしながら、駅に向かった。